Lotus Twin Cam Engine のチューニング (その3)

 もう少しばらばらに検討します。

ピストン

工具 ピストン

(工具、ばらしました)

 サークリップ(スナップリング?)をはずし、ピストンピンを抜いて単体にします。写真左はピストンリングをはずす工具です。初めて見たので記録しましたが、実際は手で取れました。クリップ(スナップリング)をはずす工具はありふれているでの写真にはしていませんが、なべちゃんによるとクニペックス製が一番優れているとの事でした。ついでに、スナップリングには裏表があるそうです。エッジがあるほうを外側になるように設置すると外れにくいそうです。知らなかった!

洗浄 刻印

(洗浄、ピストンの裏側の刻印)

 レストアの時には製造元が不明のピストンでした。そこでカーボンを洗浄して確認することにしました。カーボンをとるには”サンポール”がいいとの事で早速やってみました。サンポールは鉄製品の錆び落としにもとても有効です。”マジックリン”もかなりいいそうです。作業してみると、5年分のカーボンは結構手手ごわい相手でした。サンポールに長くつけて置くと熱を持ってきます。化学反応が恐ろしかったので適当に終了し、後は1000番の耐水ペーパーで落とすことにしました。
 コスワースとかオメガとかいろいろ夢のある話でしたが、”AE”製が正解でした。ノーマルより圧縮が高いのは確かですが、SE用のピストンと同等との事でした。径は83.3mmでした。ノーマルは82.5mm程度で最大84mmまであり、非常に特殊なピストンで85mmが存在するとの事でした。正確にはインチ表示で ブラス20のピストンと言えばノーマルの82.5mmに20X0.0245=0.49mm大きいものを示します。
 ピストンリングはオメガのものが使えるようです。2号エンジンは幸いボアが83mm程度なので次回(と言っても、いつになるかわかりませんが)このピストンで再度エンジンを作ることも可能とのこと。

ピストン ピストン

(洗浄しました)

 次回の使用に耐えるように素人ながら一生懸命に洗浄しました。  

ピストン ピストン

(オイルを回す穴)

ピストン ピストン

(ピストンピンにオイルを回す穴、バルブ用の切り欠)

ウオーターポンプ

コンプレッサー 加熱

(ばらしました)

 フロントカバーからウオーターポンプを取り外します。
 特殊なピンを抜くと後は驚くことに、圧入されているだけです。コンプレッサーですぐには抜けず、かなり硬くなっていたので過熱し再度加圧しました。
 フロントカバー側を上手に受けないと割れることもあるそうです。

本体 構造

(ウオーターポンプ)

 写真左は抜き取った本体です。回転軸が扇風機の羽のようなインペラーに圧入されています。重要なのはメカニカルシールと呼ばれるインペラー前面とフロントカバーとの間のシーリングです。そのため、軸には黄色に見えるバネ仕掛けのシーラーがはまっています。
 この黄色のシーラーの部分は2mm程度ばねで動きます。圧入の程度をコントロールしてうまく水漏れをなくする必要があります。ウオーターポンプ用のベルトを強く張りすぎるとこの部分から水漏れが発生するそうです。高回転型のエンジンでは、エンジン冷却にこの本体の回転数がそれほど必要ないので、プーリーの径を大きくして回転数を落とすこともあるそうです。
 右の写真はフロントカバーとリアープレートの間に入り水漏れを防いでいるアルミのパーツを示します。Oリング2本で陥入しています。

リペアーキット

(リペアーキット)

 リペアーキットにはピン、メカニカルシールの2個の小さなパーツ、軸、インペラーが入っています。
 純正の豪華版にはプーリー取り付けのベースとフロントカバーとバックプレートの間のアルミパーツが付属するそうです。

新しいエンジンの構想を練る

 ”老後の楽しみ計画”ですから、何とか自力で組めること、レースはしないことが最低条件です。と言って、前回チャップマンおじさんが提供して下さった”140馬力仕様”を下回るのはさえないですよね。
 デーブ ビーンのカタログから得られる情報を一つの基準として考えたいと思います。

<Stage>
俗称
SEsprint優等生
金食い虫
フル レース
推定馬力
105〜115125〜130130〜135
150
175〜180
圧縮比9.5:110.3:110.3:110.5:112.5:1
カム名称normal 101sprint 102112114116
カムリフト0.35in 8.89mm0.36in 9.14mm0.385in 9.78mm0.413in 10.49mm0.497in 12.62mm
カム 開度272°270°300°288°330°
inバルブnormal1.526in (38.76mm)big valve1.56in (39.62mm)big valve1.625jn (41.28mm)1.625
exバルブnormal1.32in (33.55mm)big valvebig valve1.375in (34.93mm)1.375
スプリングパックstandardstandardstandardstageWstageW
in ポート1.30in (33.02mm)1.37in (34.80mm)1.38in (35.05mm)1.45in (36.83mm)1.50in (38.10mm)
ex ポート1.20in (30.48mm)1.201.22in (30.99mm)1.25in (31.75mm)1.25
備考普通にはこれで充分元気よい街乗り上品なチューン街では無敵ちょっと気が違ったレース用エンジン

 データを並べるとなんとなく理解が深まります。
 まず、第一号エンジンでのチャップマンおじさんのチューニングはリーゾナブルなステージ2に近いことが理解できます。圧縮が少し上がるピストンを用い、作動角の広いカムを入れ、動弁系にはなるべく手を入れず、ビッグバルブよりもう少しのパワーを手に入れる。しかも、フルレストアで財布の軽いオーナーを慮り、財布にやさしいチューニング。ありがたいことです。チャップマンおじさんのご配慮がようやく理解できました。
 エラン オーナーになりたてのころはビッグバルブに憧れを抱いていましたが、データ的にはあまりたいしてビッグでないことが分かりますね。ステージ4でも大して大きなバルブを入れるわけではないようです。
 圧縮については、なべちゃんによると、ステージ3の 10.5:1 でもまだ甘く、11:1 位は行きたいとのことでした。  では、次に目指す峰はどこでしょう?ステージ2のまま、さらにリファインするか?思い切ってステージ3に突入するか?

カム

(カムー再考)

 レストアの時に全く経験がないまま、白紙の状態でデータのみ集めて作ったグラフに、デーブ ビーンのこのチューニングデータを書き込んで見ました。黒い四角がそれです。
 開度でモアパワーを得るタイプのカムとリフトで得るタイプのカムがあるようですが、デーブ ビーンさんのインストラクションを読んでも、彼らはリフトのほうを重視しているように思われます。また、ステージ Uまでは動弁系に手を入れないですむように配慮されているとの事なので、黄色の縦の線は約1mm右にずれるようです。ステージUとVは135馬力と150馬力で、その差は主としてカムのリフト量であると思われ、また、ステージUはかなり開度が大きなカムであることが特徴と言えますので、馬力を開度でかせいでいるとも言えます。


 それよりも、重大なことに気づきました。いまさらではありますが、容易に手に入るカムは限られていて、デーブ ビーンからは入手が非常に困難であることです。最も現実的な考え方は、供給が一番安定しているQEDのパーツでチューニングを組み立てる事だと思います。

 LTCEのチューニング (その4) に続きます。

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