解体作業は腰下に移ります。
まずオイルを抜いて、オイルパンをはずします。
特別な注意事項はありませんが、意外に沢山のボルトでとまっています。
チャップマンおじさんがバッフル加工してくださったオイルパンです。レース屋さんの目から見ても特に問題ないと言うか、ほとんど同じ考え方で作られているそうです。
ピカピカ作戦でおなじみのオイルポンプです。3本のねじで止まっています。ストレーナーは無造作にブロックに差し込まれているだけです。
エンジンを裏返して、コンロッドのビッグエンドをはずしてピストンを抜き取ります。
この作業にはちょっとしたこつがあります。ねじを5mmほど緩めた状態で完全にとりはずす前にキャップとコンロッドの間の癒着をはがすため軽くタッピングすると良いそうです。この間にはピンが打ってあるので容易には外れないとの事。ねじを完全に取ってしまうとやりにくいし、下手をするとそのままピストンを床に落としてしまいます。
1番から順に作業しました。nomi号ではオイル管理が不十分なときに、のぼりで右コーナーを3速で回ると時にオイルプレッシャーがなくなっていました。このようなことはすべきではないのですが、オイルの消費が激しかったので10回弱程度の経験があります。勿論、すぐに気づいて油圧が戻ることを確認してゆっくり運転して帰り、オイルを追加しています。
と言うことで、メタルやクランクの状態が心配でした。
やはり4番のメタルには相当の傷がありました。写真で色が少し濃い方です。ぎりぎりセーフとの事。クランク側は大丈夫との事。オーバーホールを決心して正解であったようです。
取り出したピストンを観察します。
一目瞭然でガスが抜けているのがわかります。特にピストンピン付近が強く、1番から4番まで全滅でした。ピストンリングの固着はありませんでしたが、このリングの耐久性の限界であったのでしょう。
ここで、ピストンとシリンダーの間のギャップとピストンリングのギャップの計測を行いました。
まず、ピストンのサイズを計測します。知りませんでしたが、スカートに近いところで計るそうです。
次にこの長さを特殊なギャップを測定する装置に設定し、”0”の基準とします。
基準が設定しその装置をシリンダー内に入れると、バネの力で計測センサーがシリンダーの壁に密着するまで飛び出し、その飛び出し具合が1/100mm単位で計測されます。丸い円周をなぞるように測定します。
4番シリンダーのみの計測でしたが、ギャップは8/100から10/100mm程度で特別問題なしでしたが、少し楕円になっている点が問題との事でした。シリンダーの内面は非常にきれいです。と言うか、きれいすぎの印象。
ピルトンからリングをはずしてシリンダーにはめこんでギャップを見ます。
左トップリング、右オイルリングですが、ともに肉眼的にも1mm程度あり、測定するまでもなく広すぎるとの事でした。
これがガス抜けの主因と思われました。シリンダーの内面がきれいなのもこれが一因か?
クランクをはずすためにはエンジン前後をクリヤーにする必要があることは素人でもわかります。
まず、プーリーをはずします。ウオーターポンプのプーリーは4本のねじで止まっていて簡単に外れます。クランクプーリーは写真のようにかなり深く差し込まれるようになっています。
フロントカバーは沢山の長いねじでバックプレートとともにブロックにとまっていますが、何も考えずとにかくはずせばOK。ところどころ貫通ねじなので相手側にもスパナが必要です。
フロントカバーをはずすとタイミングチェーンが取れます。バックプレートが見えてきます。
バックプレートはフロントカバーと共止めになっているねじ以外にはなんと1本のねじでブロックに固定されています。
ジャックシャフトのスプロケットはねじのゆるみ止めのためタブが入って固定されています。タブを起こしてねじを緩めます。
私が起こしたタブは残念ながら破損してしまいました。なべちゃんが、「安い部品なので買い換えましょう。」と慰めてくれました。蛇足ながら、カムのスプロケットと同じ部品だそうです。
ジャックシャフトは結構重いパーツです。燃料ポンプを電磁ポンプにしているので、その駆動部分は不要、オイルポンプの駆動部分を残し、また、カムの山も不要なので、レース用でこだわる人は切って加工するそうです。
今度はエンジンの後ろ側です。
6本のボルトでクラッチケースはとまっています。
これをはずすと、ケースとディスクが外れます。
フライホイールも6本のボルトで止まっています。リヤーオイルシールを取ると後ろ側の作業も終了。リアオイルシールはレストアの時に磨いていない唯一のアルミパーツでした。
クランクをはずすためには5個のキャップを取る必要があります。
とる前にこのキャップにも順番と方向があるそうです。で、なべちゃんが白マジックで書いてくれました。
このキャップを留めているボルトがエンジンの中でもっとも大きなトルクで締められているそうです。ワッシャーはありません。
ここでも摘出にはこつがありました。ピンは入っていないのですが、溝があるのでねじを完全に緩めて、そのねじをてこに使って前後にかなりの力を入れると溝から外れました。
クランク側に打たれているピンです。なべちゃんによると、フライホイールが飛ばないように必ず必要で、チューニングの度合いが高くなると2本必要だそうです。蛇足ながら、ホルベイのクランク、フライホイールには12本止めのものもある由。
フライホイール側には、必然的にボルト穴以外にもう一つ余分に穴が開いていることになります。リングギアの磨耗が強く交換が必要との事。
LTCEのチューニング (その3) に続きます。