このページでは、ロータス エランnomi号で約5万キロ走破したエンジンをアマチュアの管理人nomiが可及的に手を入れて、オーバーホールする作業を記録するとともに、ロータス ツインカム エンジン チューニングについて成書では記載されていないような事柄を中心に述べて行きたいと思います。
エンジンの解体は平成23年6月より開始しました。
カムカバーをはずします。ナイロンロックのナットになっており、シールワッシャーが入り、オイルの漏れを止めていたことが分かります。
三日月をはずし、カムのスプロケットをはずします。このとき、1番燃焼室のピストンがトップになっている状態で行います。バルブとピストンが当たる可能性があるからだそうです。スプロケットにドライバーなどを通して、回転を防ぎながらカムとの接続ねじをはずすと取れます。
チェーンテンショナーをはずします。そうすると、チェーンを下に落とすことが出来ます。
ヘッドボルトをはずします。これは結構硬い。ヘッドを載せるときのボルトを締める順番に緩めます。フロントカバーとの間にも3本のボルトがあります。
これでヘッドが降りるはず。
ヘッドボルトはノーマルです。シリーズ1、2のエンジンの者は少し細いそうです。チューニングエンジンには社外の強化したものを用いることが多いそうです。
写真右はバルブタイミングを決めるときに用いるスプロッケットをわずかにずらして固定するためのピンです。第1号エンジンではインテイク側にこのピンが用いられていました。エギゾースト側はノーマルでした。チューニングエンジンでバルタイを取るときにはこのようなピンで少しずつずれの違うものを沢山用意して行うそうです。
nomi号のガスケットは正常でした。勿論、オイルに冷却水が混ざったりなどの症状もありませんでした。
写真はなべちゃんがそっと出してきたガスケットと、新品のガスケットを並べて撮っています。4番の燃焼室の後ろ側の円弧が飛び出しているのがお分かりでしょうか?ロータス ツインカムではほとんどがこのような吹き抜けの形態をとるそうです。
オーバーホールの方針を決定するためにも、観察と計測が大事だそうです。
概観で分かることは、かなりのカーボンが溜まっていること、バルブのあたり面は燃焼室側から見て少し奥に設定されているー少し窪んで見えるーことです。大きな問題はないようです。
この窪みは、nomi号の場合、加工カムを使用し、ノーマルのバルブを組み合わせたためで、チャップマンおじさんがヘッド周りを大幅に改造しなくても軽い面研で性能が保障されるように苦心された結果だと思います。幸い面研の程度は軽く、まだまだ使えるヘッドである由、安心しました。
なべちゃんによると、この窪みはないほうが理想的で、加工カムを用いるならば、バルブもステムが少し長い物を使い当たり面を燃焼室側に少し押し出すようにするそうです。ステムがノーマルのままだと厚いシムを入れなくてはならないので、これは避けたいものです。
MDIにしているのでプラグはさすがによく焼けています。
いよいよ、カムをはずして動弁系の取り出し、観察です。キャップをはずします。バルブスプリングが効いているのでいつまでも少しはずしにくい感じがします。写真はすでにカムが外れています。カムメタルは正常でした。
すでにレストアのページで詳しく記載しているのでここではカムについてはサプライズのみ、”スプリントカム”の加工カムでした。
カムをはずすとバルブリフターが見えてきます。これを吸盤工具で引っ張るとスポッと取れて、コッターやスプリングが見えてきます。写真はリフターの裏側でシムが見えています。
デーブ ビーンのカタログによると、リフターにもいろいろ種類があるようです。レース用では薄いものが使われるとの事。
順番が前後しますが、写真右は動弁系を抜き取ると最後に残るプリングの受け皿とシムです。
バルブスプリングを一時的に縮めておく特殊工具を用いて、バルブとスプリングを繋いでいるコッターを緩め、磁石を用いて取りはずすと動弁系がごっぞり取れます。
コッターはバルブの軸の一番先端部分の溝に写真のような、出っ張りを入れて固定されます。コッター自身の形状がテーパーになっていて、スプリングのリテイナーがばねの力で伸びで来ると、軸に圧迫されて動かなくなる仕組みです。バルブスプリングはノーマルで大きいのと小さいのと2重になっています。
写真左はリテイナーのテーパー部分を示します。コッターとともに、良く考えられていると思いませんか?
写真右はなべちゃんのご好意で写真に撮ることが出来た貴重な写真です。左はもっともチューニングの度合いが高い場合のスプリングで長く、線間も広くスプリングのレートも高いものです。専用のリテイナーなどが必要との事。間は中間のもの、右がノーマルです。加工カムを用いる場合には中間のもの程度が良いかとのこと。
蛇足になるかも知れませんが、レース用で1万回転以上を目指す場合には、バルブが開いて閉じる時間が短くなるので強いばねが必要ーそうでないとバルブとピストンが衝突するー、またカムのリフトが高くなるので、少し長く、線間の疎なものが必要となる由。納得しました。ついでに、4気筒のばねの長さや強さを測定して均一にする作業も必要で、途方もない手間とお金がかかるわけです。
ドキッとする写真です。バルブのサイズはノーマルでした。ビッグバルブと思っていました。左は3番、右は2番のインテイクバルブです。
ご覧の如く相当厚いカーボンが付着しています。これは1,2番で軽く3,4番で重症でした。
エランの場合エンジンが後ろに傾斜するようにマウントされているので、3.4番側に常にオイルが多い傾向になります。
しかも、ロータス ツインカム エンジン はバルムステムとバルブガイドが金属的に接触しているだけでこの間の隙間からオイルが下がるのを防いでいます、と言うか、下がることには無防備です。nomi号ではその対策としてアルファロメオのパーツを流用してシールを入れていましたが、結果的にはほとんど効果がなかったようです。
写真は第1号エンジンに用いていたアルファロメオ用のバルブステムシールです。バルブガイドの部分にかぶせるように設置してありました。取り出すときに破損しています。第2号エンジンではガイドとバルブを新品にしているのでこの部品は用いませんでした。
写真右は、またまた、なべちゃんのご好意で得たエキゾースト用バルブの違いを示す写真です。右の汚れている側がnomi号のものでノーマル、左がチューニング用の径の大きなものです。
排気側のバルブは比較的きれいです。
しかし、写真右のように、エキマニの部分にはやはり3、4番で厚いカーボンが堆積していました。エギゾースト側は排気圧でオイルが吹き飛ばされるのでバルブそのものにはカーボンの付着が少ないとの事。インテイク側は吸い込むので余計にオイルが付着し溜まり易いのでしょうか?
ここで、後ろ側のキャブが不調であった原因がほぼ判明しました。3、4番のエンジン側の問題であったようです。
バルブを除去したバルブシールの部分とマニホールド部分です。
写真右のように、エキマニの部分にはやはり3、4番で厚いカーボンが堆積していました。バルブのあたり面にもカーボンが入り込み圧縮漏れを来たしていた様子がわかります。
写真左のインテーク側は比較的きれいです。
写真はなべちゃんが提供してくれたチューニング用インテイクバルブです。
写真右は右端のノーマルに比較してチューニング用が少し軸が長い様子を写しているつもりです。nomi号ではバルブスプリングの受け側にシムが入っていて調整されていましたが軸の長い物を用いればこのシムは不要の場合もあるそうです。
写真左の三つのバルブは左から超ビッグバルブ(これ以上は入らないープラグ穴の加工をして小さくすると入るそうです。ブライアン ハートのエンジン)、ひとつ飛んでビッグバルブ、ノーマルです。飛んだところにはモアービッグバルブなるものもあるようです。デーブ ビーンなどのカタログには径とステムの違うものが沢山記載されています。
径 | 1.526in (38.76mm) | 1.560in (39.62mm) | 1.625in (41.28mm) | 1.690in (42.93mm) |
備考 | 基準 | sprint | デーブ ビーン stage V、W | ブライアン ハート |
おまけです。
このバルブを再使用するつもりはないのであまり関係ありませんが、動弁系はバルブ毎に区別して保管するのが原則だそうです。コッターやリテイナー、スプリングの組み合わせが変わると問題が起こりやすい?100円ショップでタッパーを8個購入して来ました。
右は大まかに汚れを落とした状態のバルブです。結構、カーボンが強く固着していました。
燃焼室側です。排気系のバルブには石様の非常に硬い白っぽいものーセメント様とでも言いましょうかーが固着しており、除去するのにかなりの根気が必要でした。
右はバルブステムの痩せを表現したつもりです。再使用しない理由です。レース屋さんによると、バルブは消耗品だそうです。
LTCEのチューニング (その2) に続きます。