ミッションとデフはエランと共通です。
ミッション一式を入手しました。アーリーケータに搭載されていたもので、エランのミッションと形式は同じです。まず、ばらばらにして、不具合の確認を行い、オーバホールしてエランへの搭載準備を行います。
早速、注意が必要です。蓋の裏、後ろ側に3本のバネが仕込まれていて、ミッション側にパチンコ玉状のボールが入っています。
蓋をはぐるとすぐにミッションの複雑な構造が覗き見れるようになります。3本のレールがあり、それぞれがワイヤーロックされた特殊なねじで抜けないように固定されています。ワイヤーを切ってボルトを取ると後方へ抜き去ることが可能になります。
右の写真は少し作業が進んだ後の取り出されたパーツです。上の3本がレール、その下にアルミの蓋、天狗の鼻、括弧のような形をしているのがシフトフォーク、そして一番下がカウンターシャフトです。シフトホークはボルトで固定されておらず、難なくスポッと抜けてきます。
またまた、注意が必要です。真ん中のレールには前側に小さなピン状のもの(プランジャー)が入っていて、これがなくなると2本のレールが一度に動いていまいロックすることがある由。
これら3本のプランジャーが一つづつレールに仕込まれていて、レールの動きに連動して出たり入ったりして1本ずつ動くようになっている由。エンジニアの知恵には感心します。
ベルハウジングは4本のボルトでミッションケースに固定されています。
散々苦労させられた”天狗の鼻”も取り外します。このミッションはあまり距離を乗っていないのか、とてもきれいです。”天狗の鼻”は、勿論、私たちの間の俗称で、クラッチレリーズベアリングが前後する部分です。
ここまで進むとカウンターシャフトがミッションケースに固定されているところが見られるようになります。なべちゃんによると、この穴が大きくなってきてカウンターシャフトにぶれが生じ、ミッションの異常振動の原因になることがもっとも多いそうです。下のケースの写真をご参照ください。
ミッションの性格を決定するパーツです。
これだけの歯車が一体になっています。レース用のミッションでは、これらのギアが一つ一つ交換可能なように作られているそうです。このギアの歯数を数えるとギア比がわかります。クロスミッションであったらラッキーと思っていましたが、エランのセミクロスに結構近い比率になっていました。このあたりはセブンの整備書に詳しく記載されていますが、このミッションだけは記載されていませんでした。なべちゃんは以前に整備したミッションのデータを記録していて、このタイプのミッションをオーバーホールした経験がある由でした。
普通はニードルがケースに入っていて一つのベアリングを形成していますが、この部分だけはニードルが裸です。バラす時には失わないように注意が必要ですが、組む時はどうするのでしょうか?なべちゃんに教わりました。グリースの粘りでで仮固定して組むのだそうです。
素人のnomiはこれがメインかと勘違いしました。
写真右のように、メインのシャフトとつながります。直接繋がった時が4速です。1,2,3、速はカウンターギアを介してメインシャフトに繋がります。
メインシャフトとファーストモーションギアの間のベアリングです。
なんだか余分なパーツのような気がするパーツです。
鉄で出来ているので結構重たいです。レースの世界ではアルミやマグで作られているものもあるようです。機能的にはミッションマウウトを受けていることと、スピードメーターのケーブルを受けています。勿論、後ろ側のオイルシールもあり、メインのシャフトを支えています。
とてもきれいなパーツで、うっとりします。ギア軍団の最後尾の青いパーツはスピードメーター用のプラスチック製のギアです。
3速のギアとシンクロリングなどが整然とならんでいます。それぞれの塊はサークリップで抜けないように固定されています。もっと古いミッションではねじが切ってあり固定されているそうです。1速から順に外して確認します。
最後にちょっとした事件がありました。3速のギアを留めているスナップリングが折れていました。少しスプラインも傷んでいたいたようで、ギアがなかなか抜けず心配しましたが問題ない範囲でありほっとしました。
それにしても、オーバーホールしてよかった!!
写真の右が折れたスナップリングで左がなべちゃんが探してくれた、他のミッションから取った恐らくノーマルのスナップリングです。写真ではわかり難いですが、触るとすぐに折れた原因が分かりました。薄いのです。ミッション操作の毎に前後に遊びが大きく、スナップリングにも余分な力がかかっていたことは素人にも容易に想像できます。
いまさら人に聞けない知識ですが、恥ずかしながら今回初めて理解できた駆動系の基本的な動力伝達についておおさらいします。
写真左がメインシャフトの3速ギアでシフト選択されていない状態です。この状態では3速ギアは空回りしています。この状態からシフトレバーを3速に入れる操作が開始されるとこれらのギアの間が狭まり、シンクロリングの摩擦作用でシャフトの回転が制限されギアがシンクロされます。さらに操作をつづけると、写真右のようにメインシャフト側のギアの上に被さるようにロックが掛かります。このようにして、カウンターギアがら、一番向こう側に見えるヘリカルなギアを介してエンジンのパワーが伝えられます。前述の如く、1,2,3速はファーストモーションギア→カウンターギア→メインシャフトの順でエネルギーが伝えられます。
カウンターギアはクラッチが繋がった状態あるいは惰力的にすべてのギアが回転しており、ヘリカルギアを介して1,2,3、速用のギアを常に空でまわしていることになります。シフトレバーでギアを選択する操作でメインシャフト側のギアとロックしパワーが伝えられます。この、シフト操作でスライドしてロックさせるリングを”ナイザーリング”と呼ぶそうです。ナイザーリングは4速の場合、2個あり、1,2速用と3,4速用になっているとの事。前後に動くことでロックし中立でニュートラルと思われます。
向学のため、なべちゃんが教えてくれた話題を一つ挿入します。
写真はレース用の”ドグミッション”です。基本的な考え方は良く似ていますが、シンクロリングが省略され、いきなり四角い角ががつんとはまり込んでロックします。
すべてのシャフトを受けているケースです。
写真右がカウンターシャフトを受けてる穴です。
中を覗いて見るとバックギアと磁石が見えます。
写真右が取り出したバックギアとそのシャフトです。後ろ側からシャフトをたたき出すと取れます。ボルトなどでの固定はされていません。尻尾とベルハウジンでシャフトが飛び出すことはありません。バックギアにはシンクロリングはありません。
ちょっとしたマニアックな話題を一つ。
写真右が取り出した磁石とそのためのケースの飛び出しです。エラン用のケースにはこの飛び出しはないそうです。と言うことで磁石も入っていません。磁石は不幸にもミッション内で発生した鉄製の異物が循環しないように貯めるために入っているので非常にありがたい装置と言えます。10年前の設計のエランのケースにはその考え方がないのは残念です。
最近の車はもっと良く考えてあって、ケースの中でもっとも低いドレーンプラグに磁石がついているそうです。エラン用のケースではそのように改造するといいですね。